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発酵デザイナー小倉ヒラクさんに聞く!第1回(総論)発酵食品づくりの心がまえ
発酵デザイナー小倉ヒラクさんに聞く!第1回(総論)発酵食品づくりの心がまえ

発酵食品は、手づくりすることもできます。ここでは、ふだんから実践している発酵デザイナーの小倉ヒラクさんに、作り方とともにコツやポイントを紹介いただきます。初回はその楽しさと心がまえから!

教えてくれるのは この人! 小倉ヒラク 発酵デザイナー

小倉ヒラク発酵デザイナー「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、東京農業大学の醸造学科研究生として発酵を学びつつ、全国各地の醸造家たちと商品開発や絵本・アニメの制作やワークショップをおこなっている。『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014受賞。自由大学や桜美林大学等の一般向け講座で、発酵学の講師も務めている。2015年より新作絵本『おうちでかんたんこうじづくり』とともに、「こうじづくり講座」を全国で展開中。

ヒラクさんが、発酵食品づくりにはまったきっかけをお聞かせください!

 20代半ば、デザイナーになりたての頃に働き過ぎ、遊び過ぎで体調を崩していたときに発酵の先生と出会いました。不摂生と幼少期からの虚弱体質とアトピーや喘息を指摘され、「毎日発酵食品を食べなさい!」と先生に言われて、毎日お味噌汁や納豆、お漬物を食べるように。そこから”発酵”という現象が気になって自分でも発酵食品をつくりはじめたのがきっかけです。

小倉ヒラクさんの写真1 小倉ヒラクさんの写真1

デザイナー時代。典型的な不摂生ボーイでした。

どんな発酵食品を作りましたか。
大成功だった、または失敗したものはありますか?

 最初はお味噌づくりから。当時勤めていた会社の同僚の実家である山梨のお味噌屋さんと一緒に手前みそをつくりました。ゆでた大豆と麹と塩を混ぜるだけ!「こんな簡単に味噌ってできるんだ…!」と感動したことを覚えています。半年の熟成期間を経て手前みそを食べてみると、市販のものとは違う味わいにまた感動。そこから発酵にさらに深くハマっていくことに…。ちなみに最初に失敗したのは甘酒。温度管理を間違えて単なるお粥ができてしまいました(笑)

小倉ヒラクさんの写真2 小倉ヒラクさんの写真2

元同僚の味噌屋の娘、五味洋子さん(写真右)。味噌がつないだご縁で、洋子さんの兄、仁さん(同左)と一緒に絵本をつくったり、ラジオ番組をやったりするように。

手づくりするうえでのポイント、心がまえを教えてください!

軽い気持ちでのぞむ

何百年も家庭でごく身近に仕込まれてきた発酵食品。それはつまり「誰でも再現できる」ということでもあります。ご紹介する発酵食品は、ものすごく手間をかけたり注意したりしなくても割とかんたんにできてしまうのがほとんど。料理が得意じゃなくても、多少不器用でも臆せず挑戦してみてください。

多少、適当でも大丈夫

レシピの時間から少しずれたり、混ぜる頻度を厳密に守れなくてもノープロブレム。仕事やライフスタイルの時間を優先して、できる範囲で手入れをしましょう。

防腐の基本ルールをおさえる

自家製発酵食品のレシピには、腐敗のリスクを抑える知恵が詰まっています。防腐の基本的な原理を理解すれば、多少適当にやっても安全に発酵食品を仕込むことができます。いくつかキーワードをあげると、

  • ・塩をしっかり入れる
  • ・空気を逃がして酸素がない状態をつくる
  • ・極端な湿気や直射日光を避ける
  • ・ものによっては、温度管理をしっかりする

あたりが重要事項。この防腐の原理を意識したうえで仕込みにのぞみましょう。

まずはどんなものからチャレンジするとよいでしょう?

 「簡単」「失敗しない」「味の個性が出る」というメリットに加え、「じっくり待つ」という発酵の醍醐味を味わえる味噌づくりが入門にぴったり!ここから果てしない発酵沼にハマってください!

子どもの写真 子どもの写真

子どもと一緒につくるのも楽しい手前みそ

なるほど! 手づくりすることで、発酵食品がより身近なものとなりそうです。次回は、ヒラクさんが初めてつくった味噌づくりについてご紹介します。お楽しみに!