冬の乾燥と注意したいお口のトラブル

2025.2.27

冬の乾燥と注意したいお口のトラブル

気付きにくいからこそ気を付けたい、口腔内の乾燥
寒い冬、気温の低下と乾燥した空気が、高齢者の口腔環境に思わぬ影響を与えることをご存知でしょうか?お口の乾燥は見えづらい問題ですが、そのまま放置すると健康を損ね、不快感から生活の質を低下させることにつながりかねません。今回は、お口の乾燥が引き起こすトラブルと、簡単に実践できる予防策をご紹介します。

冬に多いお口のトラブルと健康問題

・寒さが与える影響

寒いと体が冷えるだけでなく、血行不良が歯ぐきに影響を与え、歯周病が悪化することがあります。特に冬は温度差で歯ぐきが収縮しやすく、歯肉炎や知覚過敏が進行することも。
また、寒さに耐えようとして無意識に歯を食いしばることで歯やあごに負担がかかりやすくなったり、これが原因で、歯やあごの痛み、あごの疲れを感じる場合があります。

・空気の乾燥が与える影響

冬の乾燥した空気は、お口の中から大切なうるおいを奪いがちです。お口の中が乾燥してしまうと、唾液の洗浄作用で食べかすや汚れを洗い流したり、抗菌作用によってむし歯を防いだりすることができなくなり、口臭や口内炎、歯周病といったトラブルが起こりやすくなるのです。そのため、乾燥対策は肌だけでなくお口にも必要といえます。

・風邪やインフルエンザによる影響

冬は風邪やインフルエンザが流行する季節です。これらの感染症にかかると、喉の痛みや咳、発熱、脱水などが起こり、それが口腔内の環境にも影響を与えます。

また、治療に使用するお薬にも注意が必要です。お薬の副作用でお口の中が乾燥したり、免疫力が低下することでカンジダ症などの口腔内感染症が発生しやすくなることもあります。風邪やインフルエンザの対策をするだけでなく、こうした二次的な影響にも気をつけたいですね。

冬の風邪

気を付けたい高齢者の口腔乾燥

高齢者のお口の健康にとって、冬の乾燥は深刻なリスクとなります。加齢や病気、服薬の影響で唾液の分泌が減少している場合、口腔内の乾燥はさらに進行しやすくなります。また、お口周りの筋力低下や姿勢の影響でお口が開きがちな方では、乾燥した空気が直接口腔内に入り込みやすく、その影響をより強く受けてしまいます。
さらに、気温が低くなる冬は喉の渇きを感じにくいため、水分補給が減少し、自覚がないまま「かくれ脱水」の状態に陥りやすい傾向があります。体内の水分量が不足すると唾液の分泌がさらに低下し、結果として口腔内の乾燥が悪化してしまうのです。

かくれ脱水

口腔内の乾燥は、食べ物を噛み砕き、唾液とともに舌でまとめ、飲み込むといった基本的な食事動作にも悪影響を及ぼします。その結果、誤嚥や消化不良のリスクが高まる恐れがあります。さらに、舌の乾燥により味覚が鈍くなると、食事をおいしく感じられなくなり、食欲の低下や塩分の摂り過ぎにつながる場合もあります。
また、乾燥が原因で舌がスムーズに動かなくなると、言葉が思うように出てこなかったり、声が聞き取りづらくなることがあります。これが続くと、話すことへの自信を失い、コミュニケーションを避けるようになる可能性もあります。このように、お口の健康は単に身体的な問題だけでなく、心の健康や社会的なつながりにも深く影響を与える重要な要素だと言えるでしょう。

ご本人もご家族も気づかないまま進行しがちなお口の乾燥。心身の健康に影響を与える前に、早めに気付き、対策していくことが大切です。

お口のトラブルのチェック方法

・口腔乾燥のサインを見逃さない

  • お口の渇きや舌のひび割れ、口臭、喉の痛みなどはないでしょうか。また口蓋(口の中の上部)や舌の裏の粘膜に乾燥や付着物が見られないか観察してみましょう。これらが見られた場合、口腔乾燥が進行している場合があります。
  • 食事の際に「食べ物が歯にまとわりついて噛みづらい」「モソモソして飲み込みづらい」「味が感じにくい」といったことがあれば、唾液が十分に分泌されていない可能性があります。
  • お口周りの筋力低下や習慣によりお口が開きっぱなしになっていないか、いびきの有無なども重要な観察ポイントです。また自覚症状がないまま「あごが外れて閉まらない」状態になっている方もいます。
口腔乾燥サイン

・定期的な歯科検診と口腔ケアの重要性

  • 食事や歯みがきの時などに口腔内を定期的にチェックできるとよいでしょう。口腔ケアは自宅でのブラッシングだけでなく、歯科医院や訪問歯科での定期的なクリーニングも有効です。クリーニング時にご本人やご家族が気づいていなかったトラブルをいち早く発見してもらえる可能性があります。
  • 高齢になるとお口の症状を感じにくくなるため、異常を感じたときにはすでに深刻な状態になっている場合も。口腔内に少しでも違和感を感じた場合は、すぐに歯科医に相談することが重要です。
歯科受診

日常生活に取り入れたい、お口の乾燥対策

お口の乾燥対策として普段の生活で取り入れやすい工夫をご紹介いたします。

・こまめな水分補給

冬期のかくれ脱水や口腔乾燥の予防には、意識的な水分補給が健康維持の鍵となります。朝起きた後、トイレの後、食事の前後など、生活リズムに合わせてこまめに水分を摂る習慣をつけましょう。
温かい飲み物(お茶やスープなど)は、体を温めるだけでなく、口腔内を潤す効果もあります。また、液体でむせやすい方には、とろみをつけることで誤嚥を防ぎながら安全に水分補給ができます。

・温度や湿度を保つ

寒い季節、室内の湿度を保つために加湿器の活用が効果的です。エアコンやストーブなどの暖房器具を使用すると空気が乾燥しやすくなるため、湿度を意識して調整しましょう。適切な湿度(40〜60%)を保つことで、乾燥による喉や肌のトラブルを防ぎ、快適な室内環境を維持できます。
また、高齢者は寒さや暑さを感じにくくなり、「家電の操作が難しい」「面倒」といった理由で低い室温のまま過ごしてしまうケースも少なくありません。しかし、寒さは血流を悪化させ、免疫力を低下させる原因となります。適切な室温(18〜22℃程度)を保つよう心がけましょう。周囲の方も注意を払いながら、快適な住環境づくりをサポートすることが大切です。

適切な湿度・室温

・口腔ケア商品の利用

口腔乾燥対策として、うるおいに配慮した口腔ケア商品 (例:ドライマウス専用のジェルやスプレー)の使用も検討してみましょう。口臭が気になる場合はマウスウォッシュ(口内洗浄液)の使用も効果的です。ただしアルコール含有のものは乾燥 を助長する可能性があるので注意しましょう。口腔の不快感にはミントなどの香料を含有するものを使用することで、お口の中がすっきりします。
また、口腔内を潤すために、無糖のガムやキャンディを使用し唾液の分泌を促すことも一つの方法です。簡単にケアができるため、毎日の習慣として取り入れるのがおすすめです。

口腔ケア商品の利用

・口腔内の健康に良い食生活

口腔内の健康を維持するには、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを豊富に含む食事を意識的に摂ることが大切です。特に、ビタミンB群や亜鉛は皮膚や粘膜に良い影響を与える栄養素です。

具体的な食品例
- たんぱく質が豊富な食材
肉類、魚介類、卵類、大豆および大豆製品、牛乳などの乳製品
- ビタミンB群を含む食材
赤身の魚、ささみなど脂肪分の少ない肉類、バナナ、いちごなどの果物
- 亜鉛を含む食材
牡蠣(かき)、うなぎ、チーズ、卵黄 など

口腔内の健康に良い食生活

これらの食材を組み合わせたバランスの良い食事を心がけることで、口腔内の健康にもつながります。
噛む力や飲み込む力が低下している方や食事量が減っている方には、介護用レトルト食品や栄養補助食品などを活用してみることもおすすめです。一人ひとりに合った食事で必要な栄養をしっかり摂り、健康を維持していきましょう。

・口腔体操やお口を動かす習慣

唾液分泌を活発にするには、口腔体操やお口を動かす習慣を取り入れることが効果的です。日々の生活に以下のような簡単なトレーニングやケアを取り入れてみましょう。

口腔機能を高めるエクササイズ
1. 唇に力を入れ、ほほをふくらませる
唇とほほの筋肉を鍛え、口腔内の血流を促進します。
2. 「パ・タ・カ・ラ」と大きく発声
お口をしっかり動かして発声することで、舌や唇の筋力を高めます。舌体操や嚥下体操としても効果的です。

口腔体操や口を動かす習慣 口腔体操や口を動かす習慣 口腔体操や口を動かす習慣

・大唾液腺(()()(せん)(がっ)()(せん)(ぜっ)()(せん))マッサージ

大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)マッサージ

a. ()()(せん)への刺激
人差し指から小指までの4本の指を頬にあて、上の奥歯あたりを後ろから前へ向かって回す。(10回)

b. (がっ)()(せん)への刺激
親指をあごの骨の内側のやわらかい部分にあて、耳の下からあごの下まで5か所くらいを順番に押す。(各5回ずつ)

c. (ぜっ)()(せん)への刺激
両手の親指をそろえ、あごの真下から手を突き上げるようにグーッと押す。(10回)

・小唾液腺(口腔粘膜)マッサージ

マッサージの前に手を清潔にしてから行いましょう。

小唾液腺(口腔粘膜)マッサージ 小唾液腺(口腔粘膜)マッサージ 小唾液腺(口腔粘膜)マッサージ 小唾液腺(口腔粘膜)マッサージ 小唾液腺(口腔粘膜)マッサージ

これらのエクササイズやマッサージを、食事の前やリラックスタイムに取り入れることで、日々の習慣として続けやすくなります。また、継続することで口腔機能の維持・向上が期待できます。

お口の乾燥対策で冬を元気に乗り切りましょう

高齢になると唾液が減少し、口腔内が乾燥しやすくなります。加えて空気が乾燥する冬は、喉の渇きを感じにくいため水分補給が不足しがちで、乾燥が進み口腔内環境が悪化しやすい時期でもあります。このようなリスクへの対策として、不足しがちな水分や栄養を意識して補い、うるおいに配慮した口腔ケア商品や口腔体操など、できることから取り入れてみてはいかがでしょうか?お口は外から見えづらい場所ですが、食事の楽しみや生活の快適さ、全身の健康につながる大切な部分です。お口の健康を守って冬を元気に乗り切りましょう。


【ケアマネジャーから介護をされている方へのアドバイス】

冬の乾燥が高齢者の口腔環境に及ぼす影響は見えづらく、対策が遅れがちです。こまめな水分補給や湿度管理、口腔体操などは簡単に実践できる乾燥対策であり、生活の質の向上にもつながります。日常生活に積極的に取り入れることをお勧めします。

ヒトケア

記事監修/ケアマネジャー ヒトケア

独立型の居宅介護支援事業所にて一人ケアマネをしています。2012年からケアマネジャーとして活動を始め、2015年独立開業。これまでの11年以上にわたる経験から得た仕事術や居宅介護支援事業所の立ち上げに関するノウハウ等を発信中。

【参考文献】
厚生労働省. e-ヘルスネット 要介護高齢者の口腔ケア
公益財団法人長寿科学振興財団 第5章 口腔ケア 7.高齢者のQOLを低下させるドライマウスへの対応

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