11月11日は「介護の日」(※)。
高齢になるにつれ、身体機能や認知機能の衰えで、介護の必要な方が増えています。高齢者に限らず、事故や病気で介護が必要になることもあります。介護の中でも“窒息や誤嚥(ごえん)の危険性”と“おいしさや楽しさ”を考える必要のある食事。日常診療の中で、この問題に直面している患者さんやご家族をサポートしている「口腔リハビリテーション」の第一人者である菊谷武先生へのインタビューを交え、食の楽しみ方を考えます。
※介護を提供する人、利用する人、そのご家族などの支援と、介護に対する国民の理解や認識を深めるため、平成20年、厚生労働省は「いい(11)日、いい(11)日、毎日、あったか介護ありがとう」を掲げ、11月11日を「介護の日」と定めました。
高齢者にとってのお餅
~風習や習慣と食事の関係~
私たち日本人にとっての「お餅」は、季節の行事や習慣と密接に結びついています。お正月にはのし餅や鏡餅、桃の節句には桜餅や菱餅、端午の節句には柏餅など、その時の思い出や風景とお餅の味や食感が、一緒に記憶されているのではないでしょうか。野菜中心の食生活の中で柔らかいもの、甘いものを食べる喜びは、飽食の時代を生きる私たちには想像もできないほど、大きな楽しみだったことでしょう。

専門家インタビュー:
菊谷武先生に訊く「要介護高齢者のお餅問題とは?」
日本歯科大学教授
口腔リハビリテーション多摩クリニック院長
菊谷 武 先生
「高齢者の食べる機能(噛む・飲み込む)に障害があっても、おいしく安全な食事の調理方法や食べ方を実践することで、食事を楽しむことができるようになる」と、世界初となる口腔専門リハビリテーションクリニックを開設。「食べる喜びをみんなで支える」をモットーに、住み慣れた地域でいくつになっても誰もが食を楽しめるよう、その実践と啓発活動に力を入れている。

-菊谷先生が提唱されている「口腔リハビリテーション」とは、どういう考え方なのでしょうか。
菊谷先生:食べる機能が低下してくると、食べ物を飲み込みに適した形状にしづらくなり(表1)、飲み込んだ食べ物が喉で詰まりやすくなります。これは食べ方をコントロールできないということですから、危険なこともあります。
表1 要介護高齢者の食べる機能の低下
- 咀嚼力(そしゃくりょく:噛む力)が弱くなり、十分に噛めないままにまる飲みしやすい
- 唾液(だえき)の量が少なくなり、噛むことが困難になり、さらにスムーズに飲み込みにくい
- 嚥下力(えんげりょく:飲み込む力)が弱くなり、飲み込んだ食べ物がのどに残りやすい
- 喀出力(かくしゅつりょく:気管に入りそうになったものを咳で押し返す力)が弱くなり、誤って気管に入り込んだものを吐き出せない
- 認知機能が衰え、一口に食べる量や噛み方をコントロールできない
しかし、食べたいものを食べることは大切な楽しみです。食べる機能が衰えてきても、口腔ケアを行ったり、食べやすい食事の調理方法を指導したり、食べやすくおいしい料理を提供してくれるお店を紹介したりすることで食事を楽しめる環境をサポートすることはできます。その取り組みこそが口腔リハビリテーションだと考えています。

―介護の必要な高齢者の食べ物の中で、食べたい、食べさせたい、というこだわりが強いのがお正月の「お餅」ですが、窒息事故の原因食品でもあるのですよね?


図1. 餅による高齢者の死亡者数
(事故発生月)
※2020年12月23日消費者庁公表資料より作図
菊谷先生:毎年お正月三が日にはお餅をのどに詰まらせる窒息事故が突出して多く発生しています。消費者庁からも年末には注意喚起(表2)が行なわれていますが、一向に減りません。
お餅はお正月の食べ物であるという日本人の習慣が、「せめてお正月くらいは食べたい・食べさせたい」につながるのだと思いますが、お餅をのどに詰まらせる窒息の危険性にはもっと目を向ける必要があります。詰まらせたら苦しいのはご本人ですから、「お正月くらい」という思いはよく考えていただきたいところです。
表2 年末年始に増加する高齢者の事故に注意しましょう

餅による窒息〔事故を防ぐためのポイント〕
①餅は、小さく切り、食べやすい大きさにしてください。
②飲み物や汁物などを飲み、喉を潤してから食べましょう。
(ただし、よく噛まないうちに飲み物や汁物などで流し込むのは危険です。)
③一口の量は無理なく食べられる量にしましょう。
④ゆっくりとよく噛んでから飲み込むようにしましょう。
⑤高齢者が餅を食べる際は、周りの方も食事の様子に注意を払い、見守りましょう。
※消費者庁 消費者への注意喚起(2022/12/27)
より抜粋
市販の介護食を知ろう
~高齢者も楽しめるお餅~
―先生のクリニックでは、食べる機能に合わせた多種類の介護食が売店に並んでいますが、皆さんの反応はいかがですか。
菊谷先生:介護食を利用している介護者の中には食べたことがないという方が多いので、試食をおススメしています。皆さん「こんなにおいしいの?!」と驚かれます。多くの食品会社が競って開発に力を入れているのですから、おいしいに決まってますよね。食べる機能のレベル(歯ぐきでつぶせる、噛まなくても飲み込めるなど)に合わせた形状で食べることを楽しむ介護食が増えるのは、嬉しいことです。介護と無縁の方にとっては目にとまりにくい介護食ですが、いつ自分が介護をする側・される側になるかわかりません。日頃からどんなものがあるのか知り、味わってみてはいかがでしょうか。

-噛まずにスプーンですくって食べられるお餅が登場しましたが、専門家の立場から見て、どのような点に注目されていますか?
また、患者さんや介護されているご家族にはどんなメリットがあると感じておられますか?
菊谷先生:一口の量やよく噛むなどの食べ方をコントロールできない方にとって、お餅は粘りがあり噛みにくく、飲みにくいために時に危険でもあります。一方、当クリニックの患者さんやご家族の「お餅を食べたい・食べさせたい」という想いが強いことは、毎年お正月が近づくにつれて実感します。
重症の嚥下障害の方には慎重になる必要がありますが、注意や工夫によって食べられる方々にとって、もち米を使用して、なめらかで食べやすく作られた「スプーンで食べるおもち」は安心して食べられますし、心の満腹感も得られると思います。
アレンジ次第でおかず風、スイーツ風と工夫も出来ますから、皆さんで味わいながら食べることを楽しんでいただきたいですね。




国産もち米粉を使用した
スプーンで食べられる
なめらかで
べたつきのないおもちです
お客様の声

食べ方のアレンジが美味しそうなので食事介助の意欲が増しました。
食べきりサイズで余ることもなく使い勝手が良い。
コンパクトなので収納しやすく買い置きしたくなる。

以前から餅を食べたいという願望がありました。
普通のお餅はとろとろに煮込んでものどにねばつく可能性がありましたが、スプーンで食べるおもちはすっと飲み込めておいしいと言っていました。
※お客様の声は、サンプリングモニターにてご回答いただいた個人の感想です。